歯科におけるオンライン診療の未来!デメリットはあるかを考える

スマートフォンやパソコンのビデオ通話を使って診察ができるオンライン診療

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に規制が緩和されたこともあり、いま最も注目されている診療方法です。

オンライン診療は、外科的な医療が中心の歯科ではあまり馴染みがないように思われがちですが、徐々に取り入れる歯科医院も増えています。

今回は、オンライン診療の特徴や歯科医院におけるオンライン診療の可能性をまとめてみます。

オンライン診療について

オンライン診療とは、パソコンやスマートフォンなどの電子機器を介して、インターネット回線を使って患者を診察する方法です。

オンライン診療の歴史は意外と古く1997年には厚生労働省からの通知で、「初診患者は原則対面」としながらも、離島やへき地など医療者不足の地域の患者や在宅糖尿病患者など慢性的な疾患を持つ患者を対象に遠隔診療という位置づけで診療が行われていました。

その後、2015年には上記以外の患者にもオンライン診療できるようになり、2018年3月には、

・初診は基本的に対面診療

・患者との合意のうえでオンライン診療を行う

・初診でなくとも対面で診療していない別疾患の診療は対象外

・オンライン診療は基本的にビデオ通話で行う

などのガイドラインが策定されました。

新型コロナの影響でオンライン診療が規制緩和

初診は対面診療が原則のオンライン診療ですが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の一時措置として2020年4月から初診でもオンライン診療が可能なりました。

厚生労働省によると規制緩和にともない、4月末まで9.7%だったオンライン診療の医療機関への導入率が7月末には14.6パーセントまで増加しているとの報告もあります(参考1)。

政府は、新型コロナウイルス感染症が終息したあとには、オンライン診療について対象などを変更することがあると述べていましたが、これを機にオンライン診療を導入する医療機関が増加するとみられています。

歯科医院におけるオンライン診療

規制緩和を機に、各医療機関ではオンライン診療を導入する動きが高まっています。

しかし、総合医療情報サイト「DoctorsFile」が医科52名、歯科50名の開業医を対象に2020年の5月に行った調査によると、医科の医師の65.4%がオンライン診療を取り入れているのに対し、歯科医師は26.0%と歯科医院におけるオンライン診療がまだ普及していないことが伺えます。(参考2)

歯科医院におけるオンライン診療の現状

歯科医院のオンライン診療は、来院が必要かどうかの相談や措置後の経過観察など対面診療の補助のような役割で使われています。

たとえば、オンライン診療で歯の状態を確認し、虫歯かどうか判断し来院を促したり、使用中の入れ歯の不具合をヒアリングして、使用方法の指導を行ったり修理や作り直しを促したりといった具合です。

歯科医院におけるオンライン診療のメリット

歯科医院におけるオンライン診療のメリットは、なんといっても患者の来院の負担や待ち時間を軽減できることです。

「歯科医院が遠い」「待ち時間が苦痛」などの理由で来院をためらっていた患者もオンライン診療なら、それらの負担を感じることなく受診できます。

新型コロナウイルス感染症拡大中の現在であれば、医師側、患者側共に感染リスクを減らせるというのもあるでしょう。

また、夜間や休日などにオンライン診療を行えば、仕事などの都合で開院時間には来院ができない患者にも受診してもらえます。

歯科医院におけるオンライン診療のデメリット

オンライン診療の導入をためらう歯科医師のなかには、歯科は治療や矯正など手技が必要なことが多くオンライン診療は不可能と考える方が多くいます。

また、口腔内はビデオ通話や写真画像だけでは診断が難しく、オンライン診療だけでは医学的判断が難しいという声も聞かれます。

そのうえ、オンライン診療の規制緩和はコロナウイルス感染症終息後に解消される可能性もあり、オンライン診療のための高額なシステムの導入に踏み出せないという歯科医院もあるようです。

歯科医院におけるオンライン診療の未来と展望

歯科医療は現在、虫歯や歯周病の急患対応型から定期的な来院によって口腔内の健康を管理する予防歯科が基本となっています。

厚生労働省でも80歳で歯を20本以上残そうという「8020運動」を推進しており、予防歯科は今後も歯科医院の重要な使命となるでしょう。

予防歯科では、口腔内のチェックや歯磨きの指導などが中心になってくるので、オンライン診療での受診が十分に可能な分野と考えられます。

また、高齢化社会の到来により、在宅で受診できるオンライン診療は今後もニーズが高まると予想されています。

政府も初診患者のオンライン診療利用の恒久化を検討していくと方針を打ち出しているので、コロナウイルスの感染症終息後も継続して診療を続けることができそうです。

予防歯科でのオンライン診療

歯科医院を定期受診しない理由として多くあげられるのが、「決まった日時に受診しづらい」「通院のための時間がない」といった声です。

予防歯科のための定期受診の手段として期待されるのがオンライン診療です。

オンライン診療なら、来院することなく自分の都合のいい時間を選んで受診してもらうことができます。

また、オンラインでは、医療行為である診察だけでなく、非医療行為である「医療相談」もできます。

医療相談は、歯科医師だけでなく、歯科衛生士でも行えるので、簡単な相談や歯垢チェックやフロスチェックなどを分担して行うことができます。

高齢者施設でのオンライン診療

歯科医院のオンライン診療の場として注目されているのが、高齢者施設です。

歯科医のいない高齢者施設では、定期的に歯科医が訪問し診療を行いますが、それ以外の日に入所者にトラブルがあってもすぐに往診できないことがほとんどです。

オンライン診療を使えば、入所者の口腔内の状況を素早くチェックすることが可能になります。

歯科医から職員に処置や対応の仕方をアドバイスしたり、場合によっては来院を促したりといった判断現場にいなくてもできるようになります。

(参考1)https://news.yahoo.co.jp/articles/ebd72e469eca31a70de5208a7d7c5c0196f59b8c

(参考2)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000010559.html