特集:RG92が
感染症を抑制か
エドワジエラ症、スクーチカ症、大腸菌症に事例続々
感染症は、水産・畜産を問わず、動物たちの健康や生産性に大きな影響を与える課題です。RG92は予防薬ではありませんが、生物が本来持つ免疫力を高めることで、感染症リスクを低減し、ワクチンの効果を高める可能性があると期待されています。今回は、感染症対策に焦点を当てた具体的な事例と、現在進行中の科学的検証についてご紹介します。
水産業界での成果
①ヒラメ(大分県) エドワジエラ症:腸内環境改善で薬の効き目がアップ
大分県佐伯市のヒラメ養殖場では、エドワジエラ症が深刻な問題となっていました。通常、5~7日間の投薬を行っても10日経たないうちに再発するという悪循環がおこっていました。 しかし、RG92を給餌したヒラメでは、病気が出ても3日間の投薬で効果が表れ、その後の再発もなく、治療期間の短縮が可能になったと報告されました。腸内環境が改善され、薬の吸収率が向上したことが考えられます。薬剤コストの削減にもつながり、経済的なメリットも期待できます。
②ヒラメ(福井県) スクーチカ症:歩留りの大幅向上
福井県のヒラメ養殖場では2023年からRG92を導入、2年連続で使用されています。
以前はスクーチカ症による影響で歩留まりが伸びず、厳しい状況が続いていましたが、今年は最終歩留り9.5割を達成。
周辺の養殖場では5割を下回るところもある中で、関係者も驚く結果となりました。
畜産業界での成果
③地鶏(愛知県) 鼻かぜ・大腸菌症:RG92で感染なし
愛知県の地鶏養鶏場では、RG92を飲水に混ぜて投与。
3月の底冷え時期には鼻かぜ(上部気道感染症)、5月後半では大腸菌症が発生しましたが、RG92を投与した鶏舎では感染が確認されず、へい死も発生しなかったとのことです。
④ブロイラー(宮崎県) 大腸菌症:回復が早く、短期間で症状が収束
宮崎県のブロイラー農場でも大腸菌症が発生していましたが、RG92を給餌することで投薬の効果が高まり、発症してもすぐに症状が収束するという報告がありました。感染症が発生した場合でも、治療期間を短縮できることで出荷スケジュールへの影響を抑えられる点が期待されています。
科学的検証:RG92のメカニズムを解明へ
①ヒラメ:ムチンの増加(日本大学生物資源科学部海洋生物学科との共同研究)
前回の温藻新聞Vol.05で紹介したとおり、RG92の摂取によってヒラメの体表粘液成分「ムチン」の増加が確認されています。
ムチンは、細菌・ウイルス・寄生虫などの侵入を防ぐバリア機能を担う重要な成分。この研究が進むことで、RG92が成長促進だけでなく感染症予防にもどのように貢献できるかが明確になっていくと考えられます。
②養豚:大腸の免疫・代謝遺伝子が増加(SARABiO温泉微生物研究所)
養豚業において、内臓の健康は成長や肉質に大きな影響を与える重要な要素です。千葉県の養豚場では、RG92の摂取が豚の内臓機能に与える影響を解析しました。特に、腸のバリア機能に関与する 「Occludin」 の発現量が増加していることが確認され、腸の健康維持や病原菌の侵入リスク低減につながる可能性が示唆されています。また、脂肪代謝に関与する 「CPT1a」 の発現が高まっており、エネルギー代謝の向上が期待されることも分かってきました。これにより、豚の成長促進や肉質の改善につながる可能性があります。
現在進行中の各試験を通じてRG92のメカニズムをより明確にし、養殖・畜産業界での実用性をさらに高めていくことが目標です。
今後の研究成果にもぜひご期待ください。