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中央研究所

2018/8/24

臨床医学の専門誌「メディカル・サイエンス・ダイジェスト」に掲載

臨床医学の専門誌「メディカル・サイエンス・ダイジェスト」に掲載
本誌編集顧問 本庶 佑 特別教授(京都大学)がノーベル生理学・医学賞を受賞されました!心よりお慶び申し上げます。
臨床医学の専門誌「メディカル・サイエンス・ダイジェスト(Medical Science Digest)」の特集「ミトコンドリアの基礎と臨床」に、温泉藻類研究所の論文『温泉善玉菌とおんぶ法』が掲載されました。

「メディカル・サイエンス・ダイジェスト」について

 「メディカル・サイエンス・ダイジェスト」は、東京大学、京都大学、慶応大学をはじめとする最先端の医師・研究者らが編集している臨床医学の専門誌です。
 「真に求められる情報のエッセンス」をコンセプトに、刻々と変わる生命医科学の最先端の情報が掲載されます。

背景

 今回「ミトコンドリア」が特集されるにあたり、原著論文「ミトコンドリア活性化による発毛エネルギーの調節機構を解明」や、 世界分子細胞生物学会(中国 2016年)化粧品皮膚科学の国際学会(アメリカ 2015年)での講演等が評価され、掲載されました。
 温泉藻「RG92」や「温泉酵母」について執筆した論文は、これまでにも様々な専門誌に掲載され注目されておりますが、今回の「メディカル・サイエンス・ダイジェスト」に掲載された論文は、コンパクトにミトコンドリアへの効果を集約し『温泉善玉菌とおんぶ法』という内容にまとめました。 本論文を総括的にまとめたものが「皮膚の安全性・有用性評価法」に掲載されております。

編集顧問の本庶 佑 特別教授(京都大学)がノーベル生理学・医学賞を受賞

 2018年10月、「メディカル・サイエンス・ダイジェスト」 の編集顧問である 本庶佑(ほんじょ たすく) 特別教授(京都大学)が、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。 今回の論文は、本庶先生より執筆依頼を頂戴し、掲載されたばかりで驚きと感動のニュースでした。
 日本人のノーベル賞受賞は、2年ぶりで26人目になります。再生医療分野を切り拓いた山中 伸弥 教授の「iPS細胞」、癌や加齢に伴う新たな分野を切り拓いた大隅 良典 栄誉教授の「オートファジー」等はいずれも『基礎研究』であり、基礎研究の重要性が認識されてきていることを嬉しく思います。
 本庶先生の「基礎研究が応用につながることを実証できた」との受賞コメントに心を打たれました。私たちもより一層研究活動に注力したいと思います。
 改めて、心よりお慶び申し上げます。(2018年10月2日更新)

論文『温泉善玉菌とおんぶ法』掲載内容

掲載内容をご確認いただけます。(各画像クリックで拡大表示)
ヒト初代培養細胞におけるミトコンドリアダイナミクス
関節炎と温泉善玉菌
おんぶ(OMB Onsen-based Mitochondrial Boosting)法

はじめに

ミトコンドリアは、エネルギー(ATP)の合成活性酸素(ROS)の産生を担う重要な細胞小器官である。ミトコンドリアの機能不全は、様々な炎症性、自己免疫性および加齢性疾患に密接に関与し、その動的形態制御は注目されている。
ミトコンドリアの形態バランスは、環境刺激やエネルギー要求性に応じて、分裂/融合タンパク質によって調節される。一般的には細長い線維状のミトコンドリアと比較して断片型はATP生産効率が低く、より多くのROSを放出する。
温泉療法は、疲労回復はもとより、関節リウマチ筋肉痛腰痛アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患の改善をもたらすが、その作用機序については謎が多い。
イタリアではファンゴ(温泉泥)治療が公的保険に適応されており、その効果は微細藻類に起因すると考えられている。私たちは地域資源である“別府温泉”から美容と健康に有用ないくつかの微生物「温泉善玉菌」を発見した。ヒト初代培養細胞を用いて新たに見出したミトコンドリアの形態と機能に関する知見とともに、温泉善玉菌(温泉藻RG92、温泉酵母M-1)による炎症性疾患の改善に向けた取り組みを紹介する。

ヒト初代培養細胞におけるミトコンドリアダイナミクス

各種ヒト初代培養細胞を用いてミトコンドリアの形態を観察したところ、線維型、断片型に加えて大きな塊のような形態(以下、丸型ミトコンドリア)が共存していた。ライブイメージングにより丸型ミトコンドリアは線維型が折りたたまれた形態であることがわかった。
丸型ミトコンドリアは線維型と同等の膜電位を維持するが、線維型と比べてATP産生量の減少ROSの増加が認められた。ヒト毛乳頭(DP)細胞では丸型ミトコンドリアは毛周期の休止期で役割を担っていると思われる。

関節炎と温泉善玉菌

関節リウマチは、①滑膜の炎症、②パンヌス形成(滑膜細胞の異常増殖)、③軟骨の分解という3段階を経て関節の破壊や機能異常を引き起こす自己免疫疾患である。
関節炎の発生や進行にはミトコンドリアからの過剰なROSの放出が密接に関与している。関節炎モデルとして、ヒト滑膜線維芽細胞に炎症刺激を与えると線維型ミトコンドリアの減少とともにATP産生の減少、ROSの増加が認められた。つまり、関節炎の進行にミトコンドリアが関与することが示唆された。
温泉藻RG92はこの炎症刺激によるミトコンドリアの形態と機能の変調を抑制する(図1)。別途、RG92は関節リウマチが進行する3つの過程を抑制する。
このことから、RG92は関節リウマチの進行を防ぐなど、炎症性関節炎の新しい治療方法の発展に繋がることが期待される。
図|温泉善玉菌とミトコンドリア
温泉善玉菌とミトコンドリア
A. 機能相関図
温泉藻RG92は活性酸素の産生を阻害し、炎症・酸化・糖化ストレスによる炎症因子の増加や細胞の障害・老化を抑制する。さらに長寿遺伝子の発現を増強し、ミトコンドリアの機能を高めることでアンチエイジング作用を発揮する。温泉酵母M-1はミトコンドリアのエネルギー産生効率やオートファジー機能を高めるとともに、一次繊毛を介した成長因子の増強作用により細胞増殖や再生を促す。

おんぶ (OMB, Onsen-based Mitochondrial Boosting)法
B. おんぶ (OMB, Onsen-based Mitochondrial Boosting)法
 ストレスを受けるとミトコンドリアは丸型にシフトし、ATP産生の脱共役をもたらす(上)。温泉藻RG92は丸型ミトコンドリアと線維型ミトコンドリアのバランスを整え、ATP産生の正常化と過剰なROSの発生を抑制する。温泉酵母M-1はさらに線維型ミトコンドリアを増やすことで、より効率的なATP産生を促す(下)。実際は双方のタイプでATPもROSも産生するがここでは簡素化して描写した。

皮膚疾患と温泉善玉菌

円形脱毛症などの各種脱毛症にも炎症が関与している。私たちはDP細胞において、終末糖化産物(AGEs)がROS産生とNF-kB経路を介した炎症性サイトカインの発現を亢進することを見出した。ROSへの影響はミトコンドリアの関与をうかがわせる。
また、DP細胞は毛包形成や毛周期の制御に関与しており、細胞遊走時には線維型ミトコンドリアが支配する。つまり、毛髪の制御において、DP細胞のミトコンドリアの役割は重要である。
RG92はDP細胞において、AGEsによる過剰なROS産生を阻害することで炎症を抑制し、炎症刺激で崩壊するミトコンドリアの形態バランスを正常化する。
さらに温泉酵母M-1はより効率的にATPを産生する線維型ミトコンドリアを増やし、細胞増殖や遊走能などの細胞機能を高める。これらは温泉善玉菌の作用が脱毛症の改善に繋がる可能性を示唆している。
ヒト真皮線維芽細胞においても同様に線維型と丸型のミトコンドリアが観察された。アトピー性皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患においてもミトコンドリアの変調が関与していると思われる。温泉藻RG92が掻痒に関わる一連の因子を抑えることは注目に値する。皮膚炎の再燃を防ぐための「Proactive療法」のような位置づけでの使用を提案したい。

おわりに~おんぶ(OMB, Onsen-based Mitochondrial Boosting)法~

別府温泉で発見した温泉善玉菌は、各炎症性疾患モデルにおいて、症状の改善が期待される作用を示した(図1A)。温泉藻RG92はミトコンドリアの形態バランスを整え、ATP産生の正常化と過剰なROS発生を抑制する。温泉酵母M-1は、さらに線維型ミトコンドリアを増やすことでより効率的なATP産生を促す(図1B)。
温泉治療で有名な温泉地からミトコンドリアの機能を良好に保つ新規原料が見つかった意義は大きく、新たな温泉科学のアプローチとしておんぶ(OMB)法を提唱した。“おんぶ”という名称には、日本独特の温かく愛情ある文化、温泉が持つ可能性を海外にも普及していきたいという想いを込めている。温泉の価値を再認識して心身共に元気になることを目指す政府の「新・湯治」推進プランとともに温泉善玉菌が美容と健康はもとより、スポーツ支援、介護、生活習慣病、健康寿命などの諸問題においても一翼を担うことを期待する。
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